
画像出典:アニメ「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」より
第1話の後半から、突如として空気を読み始める卯月。それを心配するのが、豊浜かえでである。『おでかけシスター』では、かえでと卯月は共通して“不登校”という環境を経験しており、かえでは人生の先輩として卯月に話を聞いてもらった過去がある。本人は、「思春期症候群によって空気を読むことができるようになった」と語っている。そんな卯月に注目したい。
空気について考えたことがあるだろうか。中には、空気を読むことが苦手な傾向をもつ人もいる。卯月もその一例だと言えるだろう。ただし、ここではそれが病的なものかどうかについては断定しない。誰もそれを望んでいないだろうし、不要な偏見が生まれるおそれもあるからだ。
では、空気が読めないとは具体的にどういうことなのだろうか。たとえば、ずっと自分だけが話し続けていて、相手が困った顔をしていても気づかずに話をやめない人。これは、典型的な空気が読めないパターンの一つと言える。空気を読みづらい人は、相手の表情や声のトーンを読み取るのが苦手な傾向がある。こうした傾向は状態が軽い人もいれば重い人もいる。冗談を真に受けてしまったり、皮肉に気づけなかったりするケースもある。

画像出典:アニメ「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」より
卯月も物語中盤、不登校支援の呼びかけをしているところを通りかかった人が笑っているのを目にする。「私も、みんなに笑われていたんだね」とショックを受けるシーンがある。このように、現実に気づいて落ち込むというケースは、実際にもよく見られる。また少し異なるが、「暗黙のルール」を知ってしまったことで不適応に陥るケースもある。
あるとき、「言葉に出さなくても、みんなが知っている約束事があると気づいて、ショックを受けた」と、泣きながら受診した人がいた。高校時代までは、そもそもそのような暗黙のルールがあること自体を知らなかったという。それ以後、「人の言うことを裏で考えてしまったり、いちいち影響を受けて右往左往してしまうようになり、一時おさまっていたアームカットが再燃した」と語っている。
(引用元:『自閉症スペクトラムの精神病理』内海健、医学書院、p.140)
物語の終盤では、本人も「友達の嫌味がわかるようになってよかった」と述べている。
空気を読めるようになるには、経験と学習が必要だ。人には、生まれつきある程度の空気を読む直感力が備わっている。しかし、それが苦手な人は、そこに加えて経験と学習を通じて補う必要がある。前述のとおり、空気を読み取るのが苦手な人は、表情や声のトーンの認識が得意ではない。そのため、たとえば人の表情を意識的に観察しながら話すといった練習で、ある程度改善することもある。
空気を読むのが苦手な人でも、会話のあとに「何かやらかしてしまったかな」と、自分のズレを後から認識することがある。つまり、空気が読めない人が常に無傷で、自由気ままに生きているわけでは決してない。たとえその場では気づかなくても、あとからズレに気づき、努力しようとしている人も確かにいるのだ。
最後にこの思春期症候群の症状に代償はあるのだろうか。アニメ、映画のみしか見ていないためわからない。もし空気についてもっと知りたいならば「心の理論」に関して書かれている書籍をお勧めする。